福岡県みやま市のナチュラル住宅 株式会社 彩 irodori

自然素材を使った人にやさしいナチュラル住宅

夏の暑さ対策

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夏の暑さ対策

先日開催した柳川市の完成見学会には 25組のお客様に ご来場頂きました。

見学会は 6月16日から20日

季節の節目 夏至 の時期

見学会当日は初夏でもあり気温33度と 屋外ではなかなかの暑さでした。

屋外の説明から 屋内へお客様をご案内すると、ほとんどのお客様が玄関に入るとたん 室内の涼しさに驚かれました。

エアコンを設置していないことをお伝えすると 更に驚きの様子

室内の説明をしていても 「各部屋が心地よい風が通り エアコンの必要性を全く感じません」 

と言う意見ばかりでした。

当社に始めてお越しのお客様には 当社の建物に関する様々な説明を事細かく説明いたしますが その中でも 暖かい家は簡単 夏涼しい建物は難しい旨のお話を致します。

昨今 日本の住宅も 冬暖かい と言う うたい文句の住宅が多いだけに、お客様も 比較的暖かい住宅は想像がつかれるようですけど

外気温 35度程でも 適度の風があれば エアコンの必要がありません。と言っても ほとんどの方が疑心暗鬼で 「ほんと?」 と言うリアクション

今回も 初めて当社の夏の見学会にご参加いただいたお客様が多く

百聞は一見に如かず

「本当にびっくりしました!」

と ようやく当社の建物の性能を認めていただいた次第です。

猛暑の季節で 風がなくエアコンに頼ることになっても (居室入口建具を全開にしておく前提)30坪~35坪ほどの平屋、又 2階建てで吹き抜けのある建物であれば 45坪ほどの建物でも14帖用の壁掛けエアコン1台で 全館冷房は可能です。

上記のエアコンでの実演は 昨年 平屋の建物と2階建ての建物で 多くのお客様に体感いただきましたが

中には 「特殊なエアコンですか?」

とお尋ねの方もおられましたが 普通の壁掛けタイプのエアコンです。

何はともかく

物理的な事をきちんと理解し 計画的な設計を行えば このような建物は建築できるのですが

残念なことに 昨今の日本における建物は 物理的より 機械的に解決を図る考え方が多く 結果的に機械(空調)依存の多い建物になる訳です。

上の写真は 見学会当日 建物と日差しを写したものですが

この建物は 軒の出1,300と 一般的な建物の倍ほど 軒を出しています。

それでも 夏至の時期で日差しは建物から 60㎝ほどの所までしか遮ることができません

この日差しは今後 12月の冬至に向け 少しずつ建物の方へ近づいてくる事になり1.300の軒の出でも 2か月後は建物の壁にまで日射が到達してきます。

夏の暑さを改善するにあたり 基本的な考えは 日射遮蔽 です。

日射遮蔽も 日差しの影響をもろに受ける外壁と比較し、断熱性能の低いサッシ開口部の外で いかに日射を遮るかが肝

室内で カーテンやスクリーンを使い日射を遮っても 思いの外 日射による熱量は減っておらず ハニカムサーモのような特殊なスクリーンを用入れば幾分かの効果はあるかもしれませんが、屋外での日射遮蔽ほどの効果はありません。

最近 様々な住宅会社やハウスメーカーが建ち並ぶ分譲地内に建築する機会も多く 

その際 真夏の日中 それも休日に南側の掃き出し窓や大き目のサッシの雨戸を締め切っているお宅や 日よけのシェードを窓際べったり簾のように下げているお宅をよく目にします。

理由は 単純 

日射遮蔽がされてない建物だから ものすごく熱いんです。

建物には その国々の気候風土に合った形があります。

北欧のように夏季も差ほど熱くなく 寒い期間が多い国は 軒が浅く 窓開口面積を多くし 昼間は日射を沢山取り込める形へと

対して 東南アジアのように 冬のない亜熱帯で雨季のある国の建物は オープンテラス的な軒の深い風通しの良い形へと

それぞれの国の先人たちは 気候風土に合わせた建物を作り 今に至ります。

日本は 春夏秋冬に加え梅雨もあることで どちらにも備える必要もあり 夏季で言えば 昭和の中ごろまでは 各家庭にエアコンと言う便利ツールもなく 

それ以前の人々は 空調がない環境で いかに快適な夏を過ごすかと考え 

かの吉田兼好の徒然草 第55段 「家のつくりやうは 夏を旨(むね)とすべし」

 「家のつくりは 夏を主とする方がよい」 と言う意味です

空調機器がない当時は 物理的に暑さに対する工夫をするしかなく 

その対策として 深い軒や庇による日射遮蔽を施し 庭木による木陰を作り 風通しのいい間取りで暑さをしのいでいたわけです。

当社も 冬季はパッシブ的工夫や 数十年先を見据えた断熱性能を取り入れ 寒さに対する対策は行っております。 

外で日差しを遮るため、夏はひんやりした土間
冬は日射により蓄熱性を活かした温かい土間になる
冬は外部ブラインドを開け日射取得
夏は外部ブラインドを閉め日射遮蔽

先に述べた北欧のように 冬の寒さ対策が万全な国々は 本来夏も差ほど気温が高くなかったはずなのに 温暖化の影響から 夏 最高気温30度になる頻度が多くなった事で 近年では冬の寒さではなく 夏場の暑さ対策に数年前から舵を切っています。

それも 日本とは違い 対策の多くが物理的な方法です。

物理的な話で言えば 日本の住宅の断熱に関する評価は

Uh (外皮熱還流率) 

この数値が低ければ低いほど 冬暖かく夏涼しいと 多くのお客様や販売している営業マンですら 思っているのではないでしょうか。

そもそも 外皮熱還流率は 外気温度と室内温度の大気中の温度差からなる熱損失や 抵抗値からなる数値で

日射による熱を帯びた物質の熱の動きは 全く別の問題です。

夏場 強い日射に照らされ高温と化した 屋根 外壁 ガラス等の物質その物の保有している熱が及ぼす影響は 熱還流率ではなく 熱拡散性や蓄熱性が非常に重要になってきます。

そもそも外壁やガラスは日射遮蔽を施せば熱を蓄えない訳ですが、夏 長い時間 外壁やサッシが日射を帯びないような建物は 冬期は暖房機依存の高い家にもなります。

このバランスが非常に難しく

ただ サッシのガラスなどは 間取りによる工夫や屋根形状 庇に加え簡単に外部で日射遮蔽できるツールも多く

最悪 先に述べたように雨戸を締め切る などと言う荒業もありますけど

それをやったら せっかく見晴らしがいいように設置した掃き出し窓も 全く意味がありませんね。

又 屋根や外壁に関しては 物理的に完全な日射遮蔽は不可能で 残念ですが 日本は未だに 冬暖かい建物すら普及が遅れており

住宅の断熱性能の評価は 熱還流率や気密数値のみで 屋根や外壁に重要な 熱拡散性や蓄熱性を問う以前の問題です。

断熱先進国の多いEU圏では 熱拡散性や蓄熱性は 住宅建築には当たり前の話しで この事実は 日本でほとんど知られていません。

このような事を正しく理解し物理的対策を施せば 

後はその土地に吹く 卓越風を効率よく利用して 熱がこもらない良い間取り作成をすることで 夏も空調依存度の低い住宅は建築できます。

しかし、日射遮蔽を怠れば 窓際で暖房をしながら冷房をしているような話で 熱拡散性 蓄熱性を度外視した建物は 複数の空調に頼るか 全館空調のようなシステム化を余儀なくされます。

システム設置への初期投資費用やエネルギー収支は 思いの外高く、複数台の空調機器の維持メンテナンス費用もかさむことにもなり

台風 地震 水害等で 万が一電力供給がストップしてしまえば 熱中症などのリスクも高くなります。

 太陽光発電システムが搭載されている建物であれば 日中は機械的に解決もできますが、システム破損の場合や夜間は機械的には解決できません。

若しくは、先のシステムに加え他の先進国と比較すると異常なほど高価な蓄電池を 採算を度外視し災害時の目的で設置するか…

機械的に 

物理的に 

考え方は様々です

どちらかが正解ではないかもしれませんが

このような 暑さ対策もある事を知ったうえで

住宅の検討をされるのも いいのではないでしょうか

軒ゼロのデザインでも外部ブラインドによってしっかりと日射遮蔽
冬はたくさんの日射を取り込める

About The Author

株式会社 彩代表取締役大坪 宏記
大工としてたたき上げた当社の3代目社長。古き良き日本の伝統的な建築手法を熟知しながらも、お客様のライフスタイルや自然環境を意識した、
新しい住まいのコンセプトやデザインを追求する真のプロフェッショナル。
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