福岡県みやま市のナチュラル住宅 株式会社 彩 irodori

自然素材を使った人にやさしいナチュラル住宅

実験はやはり大事

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昨年12月にオープンした当社の実験棟兼モデルハウスでは、12月 1月 様々な実験を行っています。

ちなみに建物規模は、ガレージ付きの4LDKに吹き抜けがある 41坪 断熱のスペックは0.47w/㎡kのほぼ HEAT20 G2若しくは新断熱等級でも6等級に近い断熱スペックで、7.5kwの太陽光発電システムを搭載したZEH住宅です。
 最近建築しています 0.35~0.4w/m2kの建物に比べると断熱スペックはやや劣りますが、これには理由があります。先ず、以前の標準断熱仕様で建築してきたOB施主様宅の平均断熱数値に合わせることで、OB施主様にとっても有利な情報を得ることが可能と言う所から、今回の断熱スペックに至りました。
 11年前よりZEHの建物は複数建築いたしましたが、近年の原材料高騰により太陽光発電システムを搭載できなかったお客様や、再エネの自家消費 と言う有効利用には当てはまらなかった共稼ぎ世代のお客様も多く、又 近年には、更に進化し安価になる可能性がある太陽光発電システムや蓄電池の情報もあり、システム搭載の先延ばしを提案したこともあります。
 当社の考え方としては、太陽光発電システムはいつでも搭載でき、搭載工事の下準備さえしておけば、後乗せでもさほど割高にはならないので、重要なのは建物自体の断熱スペック。いくら太陽光発電システムを搭載しても、無駄に光熱費のかかる建物では全く意味がないという事です。
 そこで、当社の実験棟を使い、今後提案する建物やOB施主様へ適切な情報提供や高断熱な建物だからできる暮らし方の工夫に関するアドバイスが可能になると考えました。幸い、今年の冬は例年になく厳しかったことで、実験結果から色々と見えてくるところがありました。
 

最近では パッシブデザイン と言う言葉を目にしたり耳にする機会が少しずつ多くなり始めてきましたが、実はパッシブデザインを用いる際、室温に関する目標数値が各パッシブ団体ごとに存在します。当社は野池正弘さんが代表である“住まいと環境社”のパッシブデザインを一つの基準と考えます。
こちらの団体では
 真冬 暖房器具を切り 朝方の最低室温が15度を下回らない
 夏場 窓を閉め切り 冷房がない状況でも35度を上回らない
このような目標で計画的な設計を行っています。
 実際3年前から室温の計算ツールを使用した設計を始め、お引き渡し致しましたお客様からいただいた室温のデーターからは、半数以上は目標数値をクリアできているようでしたがクリアできていなかった客様もいらっしゃいました。そこで、安定的にクリアできるよう断熱のスペックを引き上げた次第です。

 建物は高断熱化することで、室内環境は当然のごとく改善されます。ただし、パッシブデザインの特徴は、限りなく少ないエネルギーの使用でも快適な室温を作る事ができるところです。消費エネルギー量を少なくすると言う事は、当然エアコンの台数を少なくしていく事につながります。
 当社の実験棟では、14帖用の壁掛けエアコンとペレットと薪の併用ができるストーブ、この2台が冷暖房に使用する機器となります。

とにかく、冬場の暖房にかかるエネルギー使用量は年間の消費エネルギーの中でもかなり多い事は皆さんもご承知かと思います。そこをいかに削減できるか先ずは基本の実験から始めました。

41坪2階建て、LDKと2階ホールを繋ぐ3.3帖の吹き抜けがある建物を14帖用エアコン1台 ストーブ1台で快適な室温はできないのではないかと思う方が多いかと思います。
 冬にエアコン・ストーブいずれか1台で全館を快適にする事を目標で建てた建物。ただ、もっと快適なる工夫はあったものの、そこは後でもできることもあり、最低限のとこからスタートしてみました。

12月17日 外気温度7.5℃  室内温度12℃
 やはり生活をしているわけではない為、生活熱が無く、カーテン スクリーンを閉め切っていることもあり当然室温は低く、室内の平均的な室温は12度程。そこに、エアコン1台を26度の設定で運転を開始し、どれくらいの時間で全館の室温が改善できるかやってみました。(各居室のドアは開けておく)

結果は、写真のように2~3時間あれば全館20度近くまでは改善できるという結果でした。

12月22日 
翌朝の気温が氷点下の予報だったことから行った実験。断熱等級4超相当の事務所との比較実験です。
今回は事務所も同じ条件で13時から18時までストーブのみ稼働させ、18時ストーブの火を落とし実験してみました。

写真のようにモデルは夕方の時点で19℃
対して事務所の夕方時点では22℃
同じタイミングで3℃ 事務所の方が室温は高い状況。

翌朝 外気温 氷点下0.7℃


結果は写真のように モデルの最低室温は13.8℃
対して事務所は9℃まで下がっていました。スタート時点で3度高かった事務所が4.8℃低い室温
モデルは 18時から 翌朝14時間後 5.2度室温低下
事務所は 18時から 翌朝14時間後 13度室温低下
ちなみに 築10年目の当社事務所 ひと昔前の断熱等級4超ほどで、一昨年までの長期優良住宅基準は普通にクリアした断熱スペックです。更には、事務所には事務機器も多く、生活熱似た熱もあり、面積は モデルの半分以下と、条件は優位となっています。
断熱性能の違いによる比較実験でした。やはり断熱性能の差が室温に直結します。

次に 今季最強寒波が来ました1月24日 25日の実験。


この日は20時30分まで、2階は24℃程、1階は20℃近くまで室温をキープした状況で実験開始。ちなみにその時点で外気温度は氷点下2.5度でした。


翌朝 7時30分 外気温氷点下4度まで気温低下
さて 結果はと言うと

最低室温が モデル1階12.5℃ 2階14℃
 パッシブ的には15度を下回ったものの、実際に生活をしている状況では、暖房時間は20時30分より数時間は長い。更に人やその他の生活熱を考えれば、15度を下回ることはないと考えられます。
 又、2階の部屋はカーテン全開と言う凡ミスもあったおかげで室温は幾分かのロスがあったものの、温度計を見ればわかるよう室温が勝手に上がっているという日射取得率の高いサッシの効果が顕著に表れていました。

参考までに 事務所の温度計を見てみると

朝方の最低室温は7℃まで低下。
 更に前日、我が家ではガス温風ヒーターフル稼働でも24帖のLDKは13度までしか上がらずコタツに潜り込み。脱衣室、浴室は石油温風ヒーターで温める生活を送っていました。

又、その他の実験によるこの実験棟兼モデルハウスの室温低下の問題も発覚しました。それは、見た目を優先してしまった1セットのサッシによる室温低下。熱源と吹き抜けの場所によっては 1階2階の温度差が大きく、このレベルの断熱スペックでもやはりサーキュレーター等を用いて暖かい空気を抑えてあげる必要はある、と言う事。
 ただ、当社のモデルをご覧になられる方は、一階の水回り以外を仕切っていない大空間の暖かさには驚かれる方が本当に多く、そこは高断熱住宅の強みが生かせた間取りだと言えます。

おそらく冬場の実験も2月いっぱいまでかと思いますが、今までの実験でこの建物クラスも後少しの工夫で更に良い室内環境にできる、と言う情報やデーターが取れ、断熱性能に関するある一定の確信もできました。
 2月からは 太陽光発電システムを使った実験を開始いたします。ただし、採算度外視の蓄電池は使わず、いかに自家消費活用に生かせるか。このような実験を始めますけど、それもこれも適切な断熱性能があって初めてできる実験です。

更には、パッシブデザインによる工夫も多く、外皮熱還流率が同じ建物でも
片や一般的な建物、片やパッシブデザインを取り入れた建物とでは全く別物と言っていいほど、冬場 夏場のエネルギー使用量は大きく変わります。

 先日、パッシブハウスジャパン代表理事の森みわさんの自邸建設を、 ガイヤノ夜明けで ~寒い冬を乗り越える~というタイトルで日本最高峰のパッシブデザインの技術が放送されました。森さんの自邸は軽井沢と言う事もあり、そこそこ冬の気候は厳しい地区にもかかわらず41坪ほどの2階建てで、6帖用エアコン1台で冷暖房可能とのお話でした。
番組の最後に 森さんが言った 
「断熱強化は 最強に安い冷暖房設備です」 
と言う言葉  私も同感です。 

ただ 最近、当社があえて建物全体のコスパを考慮し性能を制御していることを
できないと 思っている方がおられるようです。
やろうと思えば、断熱性能 新等級7でも、HEAT20G3でも、更にはパッシブ的ノウハウもあります。

 そこで 昨年 当社では 冬場の室温が氷点下5度になる
九州でも冬場が非常に過酷な地域にある 庭付き一戸建てならぬ、山付き一戸建ての中古住宅を購入致しました。

モデルの実験が終わり次第、今度はこの物件を使った新たなチャレンジが始まります。

About The Author

株式会社 彩代表取締役大坪 宏記
大工としてたたき上げた当社の3代目社長。古き良き日本の伝統的な建築手法を熟知しながらも、お客様のライフスタイルや自然環境を意識した、
新しい住まいのコンセプトやデザインを追求する真のプロフェッショナル。
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