福岡県みやま市のナチュラル住宅 株式会社 彩 irodori

自然素材を使った人にやさしいナチュラル住宅

将来への備え ―2025年の住宅補助金―

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 いつもブログでは、日本の断熱基準の低さについてお話ししています。特に、日本のZEH基準、つまり断熱等級5という数値がいかに低い基準であるか、そして近い将来、間違いなく時代遅れの断熱性能になることをお伝えしてきました。当社のお客様にも、繰り返しお伝えしてきたことですが、昨日、2024年度の補正予算が国会で承認され、いよいよ住宅に関する補助事業が新しい制度のもとで実施されることになりました。やはり、日本における住宅の断熱性能の引き上げペースは、今後加速するかもしれません。そこで、新しく変わった新築における補助内容と、私たちが行うべき備えについて解説したいと思います。

 2024年度の本予算における補助事業は「住宅省エネ2025年キャンペーン」というものになります。内容は、下記の通りです。

 今回新たに「GX志向型住宅」という新しい枠が設けられました。ちなみに、先進型窓リノベなど、リフォーム関連の補助事業は、前回と同様の内容のようです。

 これまでの新築補助事業では、子育て世代や長期優良住宅の場合、補助額は100万円、ZEH住宅では80万円でした。しかし今回の補助事業では、子育て世代・長期優良住宅は80万円。ZEH住宅に関する補助額は40万円になりました。古屋の除去が伴う場合は補助額が20万円追加されますが、どちらも実質減額と言えるでしょう。ただし、新たに設けられたGX志向型住宅では160万円の補助金が交付され、この枠はすべての世代が対象となる点が大きく変わりました。

 では、「GX志向型住宅」とは何かを分かりやすく説明しますと、断熱性能を現行のZEH基準である断熱等級5から、一つ上の断熱等級6に引き上げることが条件となります。現行のZEHのように、Nearly ZEHやZEH Orientedといった、外皮の断熱強化による評価はなく、再生可能エネルギーの利用が必須となります。また、補足として、断熱等級6をクリアしても、冷暖房器具、照明器具、換気設備、給湯機器といった設備などの一次エネルギー消費削減率も、ZEH基準よりもさらに高くする必要がありますのでご注意ください。

 ちなみに、私たちの住む福岡県は断熱区分6地域に該当します。この地域における断熱等級6とは、熱還流率が0.46W/㎡kであることを指します。これは、断熱等級5のZEH基準である0.6W/㎡kよりも、0.14W/㎡k低い数値です。2050年のカーボンニュートラル社会を目指すためには、断熱等級6を一刻も早く義務化するべきだと提言する有識者も多く、ようやく日本においても、脱炭素社会に向けた動きが始まったと言えるでしょう。

 このような状況から見えてくるのは、やはり現行のZEH基準(断熱等級5)では不十分であると、国土交通省や経済産業省も判断したことの表れであり、さらなる断熱性能の引き上げを促すために、新しい補助枠を設けたということでしょう。しかし、正直なところ、ZEH基準をGX志向型住宅へと引き上げることは、それほど難しいことではありません。むしろ、補助金を活用してGX志向型住宅にいち早く移行した方が、将来的には大きなメリットがあると考えられます。

 なぜなら、2025年には、現行のZEH基準が建築基準法の最低基準になる可能性が高いからです。そうなると、現行の建築基準法における最低断熱等級4と同等の扱いとなり、現行のZEH基準は高断熱住宅ではなくなり、建物の評価自体も低下するでしょう。当然、高断熱住宅ではなくなるため、将来的には断熱強化が避けられなくなると予想されます。それ以前に、日本の断熱等級5でZEHを名乗ることが、他国ではありえないほど低いレベルであり、実際にゼロエネルギーを達成できないことを知らない人々が、住宅の販売や提供、さらには設計を行っていることは大きな問題かもしれません。

 日本において、建物構造の耐震基準や防火基準は、災害が多い国であるため、他国と比較しても厳しい基準であることは間違いありません。しかし、唯一、断熱の基準だけが著しく低い点が大きな問題です。今後、さらなる光熱費の高騰が予想される中で、いかに消費電力の低い建物にしておくかは、長期的な支出額に大きく影響します。数十年先でも断熱改修の必要がないのであれば、より多くの支出を削減できます。住宅における長い将来を見据えた備えという意味では、他の先進国の建物と比較して維持メンテナンスコストが非常に高額であるため、短期での建て替えを余儀なくされたり、空調に頼りすぎて消費電力が多いといった点が、近年の日本の建物の特徴でもあります。生涯コストを抑えるためには、まず断熱性能の引き上げが手っ取り早く、分かりやすく、最も効果を実感できるでしょう。

 断熱性能を向上させることで節約できた資金を維持メンテナンスコストに充てるだけでも、20年、30年、40年といった長期的な生涯コストの削減に貢献できます。他の先進国では、新築の建物に補助金を出すような国はなく、規制が緩かった既存住宅の性能向上にのみ補助金を出す国がほとんどです。人口減少による生産性の低下や税収減により、補助金を出す余裕がなくなることは間違いなく、遅かれ早かれ日本でも同様の政策へと移行していくと考えられます。そう考えると、せっかく他国にはない補助金が交付されるのであれば、GX志向型住宅の補助事業を利用しない手はありません。